Web集客の成否を分ける「お客様像」の決め方

前回の記事では、Web集客の出発点として「目標の立て方」をお伝えしました。ゴールが決まったら、次に考えるのは「その成果を、どんなお客様からいただくのか」です。
「うちのお客様は、来てくれる人みんなです」そう答えたくなる気持ちはよくわかります。しかし、“みんな”に向けたメッセージは、結局”誰にも”刺さりません。
今回は、Web集客の精度を大きく左右する「お客様像」の作り方を、初めての方でも実践できる手順で解説します。
なぜ「誰に届けるか」を決める必要があるのか
同じ整体院でも、「デスクワークの腰痛に悩む30〜40代の会社員」と「産後の骨盤の歪みが気になる20代の女性」では、心に響く言葉も、ふだん見ている媒体も、来店を決める理由もまったく違います。
届けたいお客様があいまいなままだと、次のような問題が起こります。
- サイトやSNSの言葉があたりさわりのないものになり、誰の心にも刺さらない
- どのメディアで集客すればいいのか判断できない(若い人向けならインスタ、経営者向けなら検索、というように適した場所が変わります)
- 広告を出す相手をしぼれず、無駄なお金がかかる
逆に、届けたいお客様がはっきりしていれば、「その人が使う言葉」で「その人がいる場所」に情報を届けられます。Web集客とは、言いかえれば「顔の見える相手に手紙を書くこと」なのです。
大勢に向けたチラシではなく、たった一人の相手を思い浮かべて書いた手紙のほうが、心に届く。これは、お客様が個人でも、会社でも同じです。
「一人に絞ったら、他のお客様を逃すのでは?」と心配な方へ
こう聞くと、「一人に絞り込んだら、それ以外のお客様に選んでもらえなくなるのでは?」と不安に感じるかもしれません。とても自然な心配ですが、実際には逆のことが起こります。
理由はシンプルです。具体的な一人に深く刺さる言葉は、その周りにいる大勢にも届くからです。「デスクワークで腰を痛めた40歳の佐藤さん」に向けた「夕方になると腰がつらい、そんなあなたへ」という言葉は、35歳の在宅ワーカーにも、45歳の運転手にも「これは私のことだ」と響きます。

人の悩みは、思っている以上に重なっているのです。逆に、誰も逃すまいと「すべての方に丁寧に対応します」と書いた瞬間、誰の心にも引っかからなくなります。
お客様像は、あくまでメッセージを作るときの「照準」であって、「お断りの基準」ではありません。像と違う方が来てくれたら、もちろん大歓迎で対応すればいいのです。
むしろ、サイトの言葉が「腰痛・肩こり・骨盤矯正、なんでもご相談ください」よりも、「デスクワークの腰痛でお悩みの方へ」と呼びかけるほうが、当てはまる人には「私のための場所だ」と伝わり、選ばれやすくなります。
事業の看板を掛け替える必要はなく、発信の呼びかけを絞るだけでいいのです。安心して絞り込んでいきましょう。
お客様像の作り方 3ステップ
「お客様像」とは、自社にとって理想的なお客様を、実在する一人の人物のように具体的に思い描いたものです。「30〜40代の女性」といった大まかなくくりとは、くわしさが違います。
ここからは、その作り方を3つのステップで見ていきます。それぞれのステップで、個人が相手のビジネス(BtoC)と、会社が相手のビジネス(BtoB)の両方の進め方を示しますので、自社にあてはまるほうを見ながら進めてください。
ステップ1「誰の心を動かせばいいか」を決める
まず、一件の申し込みが決まるとき、「誰の心が動いているのか」を考えます。ここが、ビジネスの相手によって変わる大事なポイントです。
個人が相手(BtoC)の場合は、悩んで、決めて、お金を払う人が、すべて同じ一人です。ですから、その代表的なお客様を一人思い描けばOKです。先ほど登場した「デスクワークで腰を痛めた40歳の会社員・佐藤さん」を例に、このまま進めていきましょう。
会社が相手(BtoB)の場合は、少し事情が変わります。会社との取引では、「実際に使う担当者」と「導入を決める社長・上司」が別人であることがよくあります。

担当者は「使いやすさ」を、決める人は「費用に見合う効果があるか」を気にするなど、心を動かすポイントが違います。そのため、この2人それぞれを思い描いておきます。どちらか一方しか納得させられないと、話が前に進まないからです。
つまり、思い描く人数は違っても、やることは同じです。「その一件を動かすカギになる人物を、具体的に思い描く」——これがステップ1です。
ステップ2 実際の情報をもとに、人物像を書き出す
思い描く相手が決まったら、その人物像を具体的に書き出します。このとき最も大切なのは、「願望だけで作らない」ことです。願望だけで作った人物像は、実際にはいないお客様に向けて発信し続けることになってしまいます。
まず、次のような情報源から「実際の声」を集めます。
- 今のお客様へのヒアリングやアンケート(なぜ自社を選んだか、他とどこを比べたか)
- 営業や接客のスタッフが日々聞いている「お客様の生の声」
- 問い合わせメールや口コミに書かれている言葉
まだお客様がいない創業期の方は、別の集め方があります。記事の後半でお伝えします。
集めた情報をもとに、次の項目を埋めていきます。
個人が相手(BtoC)の場合の記入例
| 項目 | 記入例 |
|---|---|
| 名前・年齢・性別 | 佐藤健一・40歳・男性 |
| 仕事・世帯収入 | IT企業の会社員・在宅と出社が半々のデスクワーク |
| 家族・住まい | Google検索、YouTube、SNS |
| ふだんの情報収集 | インスタ、Google検索、ママ友の口コミ |
| 悩み・困りごと | 夕方になると腰が痛む、通院が続くか不安 |
| 大事にしていること | 通いやすさ、原因の説明、実績や口コミ |
会社が相手(BtoB)の場合の記入例
使う人・決める人の2人を書き出します。
| 項目 | 使う人(担当者) | 決める人(社長) |
|---|---|---|
| 人物 | 中村さん・42歳・総務担当 | 58歳・経営者 |
| 会社 | 従業員30名の製造業 | 同左 |
| 悩み・困りごと | Excel管理の手間・ミス・残業を減らしたい | コストを抑えたい・利益を伸ばしたい |
| 気にすること | 自分が使いこなせるか | 費用に見合う効果が出るか |
| 大事にしていること | 操作のかんたんさ・サポート | 費用対効果・導入実績 |
ここまで具体的にすると、「この人なら、この見出しを読んでくれるだろうか?」と、あらゆる判断に使える”共通のものさし”ができます。
ステップ3「悩み」と「その人の言葉」を掘り下げる
最後に、そのお客様が抱えている悩みを、本人が使いそうな言葉で書き出します。ここがいちばんの宝物になります。というのも、この言葉が、後で記事を作るときや、検索で見つけてもらうための言葉選び(第5回・第6回で解説します)に、そのまま使えるからです。
- 個人が相手(BtoC)の例
-
先ほどの佐藤さんなら、専門的な病名ではなく「朝起きると腰が痛い」「夕方になるとデスクワークがつらい」が、本人の言葉です。
- 会社が相手(BtoB)の例
-
「毎月の集計作業に何日もかかっている」「担当者しかわからない業務があって不安」などが、担当者の言葉です。
会社が相手の場合は、使う人と決める人で、響く言葉が変わります。担当者には「かんたんに使える」、社長には「○ヶ月で費用を回収できる」というように、それぞれの悩みに合わせて伝え分けると効果的です。

お客様が「申し込むまでの流れ」をたどる
お客様像ができたら、その人が「自社を知ってから申し込みに至るまでの道のり」をたどってみます。人は、いきなり申し込むわけではなく、次の4つの段階を進んでいきます。これは、お客様が会社の場合も同じです。

それぞれの段階で、お客様が「何を考え」「どこで情報に触れ」「何があれば次に進むか」を、表に整理してみましょう。
| 段階 | 考えていること | 触れる場所 | 必要なもの・後押し |
|---|---|---|---|
| 知る | 朝、腰が痛い。なんとかしたい | Google検索、インスタ | 悩みに共感する記事・投稿 |
| 興味を持つ | 整体って効くのかな? | ブログ記事、動画 | 原因の説明、良くなった例 |
| 見くらべる | どこの院がいいんだろう | 口コミサイト、公式サイト | 料金、実績、お客様の声 |
| 申し込む | ここにしよう。予約したい | 予約ページ、LINE | かんたんな予約、初回特典 |
この表を作ると、大事なことが見えてきます。それは、段階によって「届けるべき情報」と「使うべき場所」が違うということです。まだ「知る」段階の人にいきなり「今すぐ予約を!」と迫っても響きませんし、「見くらべる」段階の人に悩みの説明だけ見せても決め手に欠けます。
なお会社が相手の場合、この道のりは個人よりも長くなりがちです。社内会議や相見積もりを経て、数週間~数ヶ月かけて決まることも珍しくありません。その間ずっと信頼を保てるよう、判断材料になる実績や導入事例を用意しておくと効いてきます。
この流れの整理は、第4回のサイトづくりや、第5回でお伝えする「どこで集客するか」を決めるときの設計図そのものになります。
まだお客様がいない場合(創業したて・新規事業)
「うちはこれから始めるところで、まだお客様が一人もいない」という方もいるでしょう。創業したばかりの方には当然の悩みですが、心配いりません。お客様がいなくても、「実際の声に近いもの」を集める方法があります。
- 知人・友人に聞く
-
想定するお客様に近い人に「こういうとき、何で調べる?」「何が決め手になる?」と尋ねてみましょう。一人でも、貴重な生の声になります。
- 同業他社の口コミを読む
-
そこに書かれた不満や喜びは、これからあなたのお客様になる人の本音です。「予約が取りにくい」「説明が丁寧だった」などが参考になります。
- Q&AサイトやSNSで悩みの言葉を探す
-
想定する悩みが実際にどんな言葉で語られているかを調べると、リアルな表現が見つかります。
こうして作る最初のお客様像は「仮説」で構いません。大事なのは、集客を始めて実際のお客様が現れたら、その声で答え合わせをして育てていくことです。最初のお客様が10人ほどできたら一度見直すと、精度がぐっと上がります。完璧を目指さず、まず仮でも描いて走り出しましょう。
ありがちな失敗と注意点
- 願望だけで作ってしまう
-
「単価の高いお客様に来てほしい」「若い層を取り込みたい」といった願望だけで作ると、実際に来てくださっているお客様とズレた発信を続けることになります。願望はいったん脇に置き、ステップ2でお伝えした「実際の声」から作りましょう。
- 細かく作り込むこと自体が目的になってしまう
-
血液型や好きな映画まで決めても、集客の判断に使わなければ意味がありません。「悩み」「ふだんの情報収集のしかた」「選ぶときの基準」の3点が具体的なら十分です。
- 一度作って放置する
-
市場もお客様も変わっていきます。半年〜1年に一度は、実際のお客様と照らし合わせて見直しましょう。
まとめ「たった一人」を深く知ることが、多くの人に届く近道
今回のポイントを整理します。
- “みんな”向けの発信は、誰にも刺さらない。まず心を動かすべき相手を具体的に思い描く
- 具体的な一人に刺さる言葉は、似た悩みを持つ大勢に届く。絞ることは、他のお客様を断ることではない
- お客様像は「①誰の心を動かすか決める→②人物像を書き出す→③悩みの言葉を掘り下げる」の3ステップで作る
- 会社が相手(BtoB)なら、「使う人」と「決める人」の2人を思い描き、それぞれに響く言葉で伝え分ける
- お客様がまだいないなら「仮説」で作り、実際のお客様が現れたら答え合わせをして育てる
お客様像と申し込みまでの流れが見えると、「誰に・何を・どこで伝えるか」の輪郭がはっきりしてきます。しかし、まだ足りないものがあります。それは「なぜ他社ではなく、自社を選んでもらえるのか」という視点です。
次回は、自社ならではの強みを見つけて言葉にする方法を解説します。